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ひらめのブログ

日々の思考や学びを記録するブログ

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LLM時代に感じること

AIキャリア技術

これはただのポエムです

動機

最近、生成AI / LLMの話題がどこでも聞こえてくる。ChatGPT、Claude、GitHub Copilotなど、毎日のように新しいツールが登場し、「AIがエンジニアの仕事を奪う」という議論も盛んになっている。

ソフトウェアエンジニアとして働いている自分は、この変化をどう感じているのか。恐怖なのか、ワクワクなのか。正直な気持ちを整理してみたいと思った。

ソフトウェアエンジニアとしての私の感情

よかった点(というか、ワクワクしている点)

抽象化レイヤーが一つ上がっただけだと思っている

そもそも私たちエンジニアは、コンパイラが行っている最適化を隅々まで把握しているわけではない。コンパイラがプログラムをバイナリに変換してくれるおかげで、私たちはその詳細を知らなくても開発できている。

でも、コンパイラの仕組みを理解している人の方が、うまくコンパイラのアウトプットを使える。これが抽象化レイヤーの下を学んでいる強みだと思う。抽象化されているモジュールでは、限界が来た時に中身を見に行く必要がある。(HTTPクライアントライブラリとかでも同じことが言えそう)

適切にデザインされた抽象化は生産性を上げる。実際、サイバーエージェントでは「6~7割以上のエンジニアがGitHub Copilotを活用しており、Copilotで推薦されたコードの3-4割が採択されている」状況で、「感覚的に2割前後は生産性が改善した」という報告もある1

今回の抽象化は確かにすごい

ただ、今回の抽象化はかなり分厚く、広範囲に影響を及ぼしている。コンパイラやクラウドのようなソフトウェアエンジニアリング特定の領域に留まらず、あらゆる分野に影響を与えているのがこれまでとの違いだ。

でも、私たちソフトウェアエンジニアにとってはこれはチャンスだと思う。適応できるだけの能力と慣習を持っているはずだから。

レイヤーが分かれていくのが楽しみ

AIを活用する人間、AIがどう動作するかを理解している人間、AIが提供する機能の裏側を理解している人間。それぞれでレイヤーが分かれていき、異なる強みを発揮していくんじゃないか。

エンジニアの役割は「複雑なコンポーネントの専門開発エンジニア」「ソフトウェア要素を組み合わせるコンポーネント組立エンジニア」「AIを活用するコンポーネントコンサルタント」に分化していくと予想している記事もある2

自分の仕事がなくなるのであれば、それはそれで良い。抽象化されるレイヤーが増えたのであれば、その上を考えれば良いだけ。プログラミング自体が好きな人には少し酷な時代かもしれないが、プログラミングの先の目的により集中できるようになると思う。

イマイチな点(というか、不安な点)

本当に楽観的すぎるのかもしれない

上記のように楽観的でワクワクしているような人間は、いつの間にか職を失っている、ということもあり得るかも。この辺は正直全然想像がつかない。

「人間らしさ」が求められない分野はどうなるのか

正確さだけが求められる分野では、価値を出し続けるのは難しくなっていくのだろうか。ソフトウェアエンジニア領域の一部分(もしくは大部分?)もそういう分野の一つかもしれない。

一傍観者の立場として考えたこと

将棋の電王戦から学んだこと

AIがある領域に踏み込んできて人の能力を超えた時、どのように人間は反応するのか。自分の記憶に新しいのは将棋の電王戦だ3

AI対人間の真剣勝負が何回か開催された後、AIの勝利という結末に終わった。これで「将棋に関してはAIの方が強い」という認識が固定化された。

でも、その後どうなったか。むしろ将棋観戦の需要は高まっている。

人々は「AIのような最善手を指せるか」という観点に加えて、指している人間の人間らしさ、プロ棋士らしさを求めているのだ。羽生善治九段も、人間同士の将棋では「多分に心理的な要素が働いている」「互いにこう指したいという大局的な意図が先にあるから、そこに駆け引きの妙味も生まれてくる」と語っている4

「あんなに強いプロ棋士がこんなところで間違えるなんて、プレッシャーがすごいのだろう」とか、「AIなら指せる最善手だが、人間にとっては今指した手が展開が読みやすく最善になるのだろう」とか、「この渋い受けの一手は〇〇さんらしさがある」といった具合に。

そして、羽生さんの本でも触れられているが、「直感力」とその直感に基づく「決断力」の価値が上がっていることも注目に値する5。この直感は当て感ではなく、これまでの経験に裏打ちされた勘所とそれに基づく決断力は人間ならではの営みである。

娯楽と経済活動の違い

ただ、上記は娯楽の分野だからこのような楽しみ方ができているのだと感じる。経済活動の分野ではどうなるのだろうか。

社会階層の分断への懸念

また、AIによって社会的階層の分断がより広がってしまうのではないか、という懸念も自分の中では大きい6

AIは基本的に課金が必要で、サブスクリプション料金を支払える層だけが利益を享受していく構造になっている。

さらには、AIの使い方自体も社会経済的地位によって異なるという研究もある7。高い社会経済的地位の人は抽象的で短い指示で専門的なタスクを依頼する傾向があり、低い地位の人はより具体的な指示でAIと会話的にやり取りする傾向があるとされている。

これにより、現在存在している経済的・能力的な格差がより広がっていくことは懸念している。大衆が同じような利益を享受するためにはどうすれば良いのだろうかと考えたりする。

感想

個人的には、職が失われた場合にはカフェ店員でもしてゆっくりと過ごせれば良いと思っている。AIの方が社会に良いインパクトを与えられるのであれば、それは道を譲るのが良いのではないか。

そんな風に考えている自分は、やっぱりこの変化にワクワクしているのだと思う。恐怖よりも好奇心の方が強い。


Footnotes

  1. エンジニアを目指す学生と共に考える、生成AIでエンジニアの未来はどう変わるのか | CyberAgent Way

  2. 生成AIが変えるシステム開発とソフトウェアエンジニアの未来 - LaKeel DX

  3. 将棋電王戦 - Wikipedia

  4. 現役名人がコンピューターに負けた。将棋電王戦が、人間同士と違う部分。- Number Web

  5. プロ棋士・羽生善治が語る"直感の正体"。将棋で「長考に好手なし」と言われる理由とは|新R25

  6. 【AI格差】AIは誰のもの?社会経済的地位がAIとの付き合い方を変える「AI格差」の実態|高梨洋平|リサーチャー

  7. MIT Tech Review: 主張:人手不足を補うAIがなぜ、経済格差を拡大するのか